新国立劇場で初演される新作オペラ『ナターシャ』
東京・新国立劇場にて、著名な作曲家細川俊夫と作家多和田葉子が協力した新作オペラ『ナターシャ』の記者懇談会が開催されました。このオペラは、2025年8月に世界初演される予定です。細川は人と自然の関わりをテーマに、西洋と日本の音楽が融合した独特のスタイルを持っています。その作品の中心にあるのは、現代の人間の欲望と環境破壊についてのメッセージです。この作品は、ただのストーリーではなく、私たちの生きる時代を反映した深い考察を要求します。
オペラの内容とテーマ
『ナターシャ』の台本は、多和田葉子が手掛けました。多和田は、ドイツを拠点にしつつ日本語とドイツ語を操る作家であり、本作では多言語オペラを通じて異なる文化の岸をつなげる挑戦をしています。細川の「日本発の多言語オペラを創りたい」というお誘いを受けて、多和田はその挑戦を受け入れました。多言語が響き合うこの作品は、地球の悲鳴を背に、絶望の中で他者を理解し合おうとする若者たちの姿を描いています。
懇談会の様子
記者懇談会の冒頭、細川俊夫はこの作品が自身の初の日本での世界初演であることを喜び、「このオペラは、難民を題材にした物語で、現代の地獄を巡るストーリーです。具体的には、環境問題及び社会的対立をテーマにし、特に若者たちの視点から描かれています」と述べました。細川は作曲過程の厳しさも語り、「多和田さんが見事な台本を書いてくれたおかげで、ようやく完成に至りました」と感謝の意を表しました。
一方、多和田葉子はオペラの台本を書くことが初めてであり、非常に緊張しつつもわくわくしていると述べました。「多言語というテーマは、今の私たちの社会に非常に必要なことであり、オペラを通じてその重要性を訴えることができればと思います」と彼女は語りました。彼女は世界中の様々な言語の響きが作品に取り入れられていることも強調しました。
大野和士のコメント
さらに、新国立劇場の芸術監督である大野和士からも、書面でのメッセージが寄せられました。彼は、細川と多和田のコラボレーションに非常に期待を寄せ、作品のテーマである「人間の存在と欲望」について深く考えることの大切さを強調しました。大野は、この新作オペラを通じて、ますます重要となる人間同士の本質的な結びつきを表現できると期待しています。
質疑応答と討論
質疑応答のセッションでは、作品に使用される言語の数や音楽的工夫についての質問が相次ぎました。細川は、冒頭のコーラスが36カ国語で「海」と関連する言葉をささやく場面について語り、多和田は英語と中国語を使用したシーンなども紹介しました。多国籍の言語が互いに響き合うことで、どのように音楽やストーリーが展開されるのかに注目が集まりました。
細川は「言葉には心の奥にある一つの海から生まれるという考えがある」と述べ、異なる言語の使用によって深い結びつきを生む音楽の力を強調しました。
公演情報
この新作オペラ『ナターシャ』は、令和7年度日本博2.0事業として新国立劇場で2025年8月に初演される予定です。観客はこの新たな音楽体験を通じて、現代の問題を考えさせられることでしょう。チケットは新国立劇場ボックスオフィスで購入可能です。見逃せない公演になること間違いなしです。