オーダーメードスーツの需要拡大で紳士服業界が回復を果たす
帝国データバンクが発表した最新の調査によると、2024年度における上場紳士服業界の業績は、オーダーメードスーツの需要拡大や新入学・入社のシーズンによる影響で、明るい展望を見せています。特に、業界の主要7社での営業利益が前年同期比で6%増加し、177億円に達しました。これは、コロナ禍前の2018年度の水準に迫る数字であり、紳士服市場の回復を象徴しています。
今期のスーツ事業の総売上高は3564億円で、前年とほぼ横ばいとなりましたが、確実に売上の中身は進化しています。店舗数は2024年度末で約2300店舗と、コロナ禍の影響を受けた過去から約700店舗減少しましたが、オーダーメードスーツの需要が増加しているため、客単価が上昇しています。
スーツ需要の変化と業界の取り組み
近年、リモートワークやカジュアルな服装の普及により、従来のビジネススーツの需要は縮小。そんな中、消費者の品質重視が高まり、個々のニーズに応じたカスタマイズを求める動きが活発化しています。特にオーダーメードスーツは、過去の「量を優先する」販売戦略から「質を重視する」方向へと舵を切るきっかけとなりました。
業界の先駆けとなる青山商事は、自社のオーダースーツブランド「Quality Order SHITATE」が好調。その影響から、売上高は若干減少したものの、営業利益は1割以上の増加を見せています。特に、スーツ1着の平均販売単価は昨年度より7.3%上昇し、メンズスーツの平均販売単価は3万4076円となっています。
一方、AOKIホールディングスも新たに高機能ウェアやビジネスカジュアルに注力し、好評を得ています。特に新入学や新社会人向けの需要を取り込むことで、ファッション事業全体での増収増益に成功しました。
中小企業の挑戦と今後の展望
2025年度の新入学・入社に向けた需要も期待されており、オーダースーツの知名度が高まり、中小の紳士服店でもオーダースーツの販売に力を入れる姿勢が見受けられます。このような中、原材料費の高騰や円安による仕入れコストの上昇が課題として残りますが、スーツ市場全体の付加価値向上が進む中で、今後の成長が見込まれます。
洋服の青山やAOKIといった大手企業が取り組む姿勢は、業界全体にポジティブな影響を与えており、新しいビジネスモデルとしての定着が期待されています。カスタマイズニーズに応えることで、今後の市場はいっそう多様化し、ますます発展していくことでしょう。これからの紳士服業界の動向に注目です。