九州産業大学とセブン‐イレブン・ジャパンの包括連携
2023年7月2日、九州産業大学(福岡市)と株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(東京都千代田区)は、食品の安全性確保や食品ロス削減を推進するための「包括的な連携協定」を締結しました。この連携には、研究の発信、相互協力、学生への教育、社会連携の4つの柱が組み込まれています。
特に注目を集めているのは、九州産業大学の中山素一教授が開発した「微生物同定技術」です。この技術は、九州産業大学が所有する質量分析計「MALDI-TOF MS」を使用しており、食品に悪影響を及ぼす菌の種類を特定することができます。この技術により、従来は数週間かかっていた菌の特定作業が、わずか数時間で完了するようになるため、食品のリスク管理が大幅に改善されることが期待されています。中山教授は、この技術を用いた「MALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアム」を発足させ、全国での産学連携を進めており、すでに内閣府の「第7回オープンイノベーション大賞」で農林水産大臣賞も受賞しています。
セブン‐イレブンは、この新しい技術を駆使することで、食品製造現場における衛生管理の精度を高め、消費者に作りたての美味しさを届ける「長鮮度化」を進める方針です。具体的には、連携協定における4つの柱が、どのように展開されるのかを見ていきましょう。
1. 研究の発信
セブン‐イレブンは中山教授の研究を広めるため、広報支援を行い、業界内での認知度を高める活動に取り組みます。2026年には、セブン&アイ・ホールディングスの「株主通信」に特集記事を掲載し、約29万部が発行されることも決定しています。今後もさまざまなメディアを利用して、研究成果を発信していく予定です。
2. 研究協力
中山教授の研究では、MALDI-TOF MSを用いて菌の特定やデータベース化が行われており、食品工場での菌検査がスピーディに行えるようになります。セブン‐イレブンでは、特定精度を高めるためのデータを共有し、衛生管理の向上に努めることが約束されています。具体的には、微生物汚染の特定や衛生管理のレベルを上げるための取り組みが強化されます。
3. 学生の教育
セブン‐イレブンは、大学の教育にも貢献します。「食の安全・安心」に関する講義や演習、現場見学の機会を提供し、学生が業界での実務を学ぶ環境を整備します。この取り組みは、次世代を担う人材育成にも寄与するでしょう。
4. 社会連携
九州産業大学とセブン‐イレブンは、地域社会とのつながりを大切にし、「食の未来を考える」テーマを基に成果報告会などを共催します。2026年には、中山教授やセブン‐イレブンの社員によるイベントを開催し、地域の課題や新技術の実践的な成果を発表する予定です。
実践事例:かつ丼の消費期限延長
連携協定に先立ち、セブン‐イレブンと中山教授は2025年に自社製品「チルド弁当 味しみロースかつ丼」の消費期限を1日延長することに成功しました。これは、協力したわらべや日洋食品株式会社とともに、工場内で実施した5,000件の菌検査によるものです。MALDI-TOF MSを駆使した検査により、どこにどの菌が存在するかを特定し、その後の管理と環境整備が行われました。
この研究から得られたメリットは以下の3点です:
1.
スピード:数週間を数時間に短縮。
2.
コスト:検査費用を従来の20分の1に削減。
3.
精度:菌の発生経路を明確に。
まとめ
九州産業大学とセブン‐イレブン・ジャパンは、産学連携を通じて、食品業界に新しい風を吹き込む取り組みを行っています。作りたての美味しさを保ちながら、食品ロス削減および食の安全への新たなアプローチが求められる現代において、両者の協力は希少且つ重要です。この試みが、未来の食文化へとつながることを期待しています。