映画館で楽しむバレエ『くるみ割り人形』
2026年1月から全国の劇場で、パリ・オペラ座のバレエ『くるみ割り人形』が映画化され上映される。この作品は、特にヌレエフ版として知られ、観客に深い心理描写と高い芸術性を提供してくれる。舞台の美しさや迫力を映画館で体験できる貴重な機会となる。
伝統と革新の融合
パリ・オペラ座はその悠久の歴史の中で、多くの名作を生み出してきたが、ヌレエフの解釈のもとで創られた『くるみ割り人形』は、特に大きな意味を持つ。1985年に振り付けられたこの作品は、E.T.A.ホフマンの幻想的な原作に基づき、主人公クララの内面の変化を巧みに描いている。つまり、子供向けの童話の枠を超え、大人の観客にとっても感情的に響く作品なのだ。
心理描写の力
舞踊評論家の森菜穂美氏は、「この作品の特徴は、ドロッセルマイヤーと王子を同じダンサーが演じる点」と解説する。クララの心情が、優雅なドロッセルマイヤーから王子へとつながることで、彼女の成長がより明確に感じられる仕組みになっている。
また、この作品の舞台では、現実世界と夢がシームレスに行き交い、観客はクララの内面世界を可視化する心理的なホラー的要素を体感することができる。「お菓子の国」や「雪の国」の場面では、目を奪われるような華やかな舞踏が展開され、観客はクラシックバレエの美しさを堪能できる。
別れの舞台
特筆すべきは、クララ役を演じるドロテ・ジルベール。彼女の芸術性は特に金平糖のシーンで際立ち、しなやかなステップと美しい音楽性に観客は引き込まれる。彼女にとって、これは定年を控えた最後の『くるみ割り人形』となるため、感慨もひとしおだ。また、ギヨーム・ディオップが演じる王子とドロッセルマイヤーの二役は、観客に新たな視点を与える。彼の演技は、若々しさだけでなく、ミステリアスさも持ち合わせ、物語の中に深い影を投じる。
日本初の完全上映
日本では初めて完全な形でこのヌレエフ版が映画館で上映されることとなり、これは名作の真価を知るためには絶好のチャンスだ。上映は2026年1月23日から3月19日までの期間中に行われ、さまざまな劇場での公開が予定されている。その多くの劇場は全国各地に点在しており、シネマフロンティアやTOHOシネマズなど、アクセスも容易だ。
この機会に、観客は映画館での迫力ある音響や映像美を通じて、パリ・オペラ座のエッセンスを体験し、名作の奥深さを味わうことができる。バレエの新しい楽しみ方を提供するこの上映は、クラシックバレエ愛好者のみならず、全ての年代に訪れていただきたいイベントだ。観る者が自身の内面と向き合い、共鳴する感情を見出すことのできる、そんな美しい舞台作品であることを忘れないでほしい。