生成AI時代における肖像権・パブリシティ権の現状
2025年6月24日、特定非営利活動法人の肖像パブリシティ権擁護監視機構が行った新たな調査が発表されました。この調査は、生成AI技術の進展に伴う肖像権やパブリシティ権に関する侵害疑義事案の実態を把握するために実施されたもので、業界初の大規模なものとなります。
調査の概要
調査は2024年4月から12月にかけて行われ、インターネット調査、アンケート、ヒアリング、個別調査の方法で進められました。対象には、SNSプラットフォーム(TikTok、X、YouTubeなど)、生成AIプラットフォーム、広告媒体、アダルト領域、芸能事務所、関係企業・団体が含まれています。
インターネット調査の結果
調査結果によると、主要SNSでは「~になってみた系」や「~に歌わせてみた系」という投稿が延べ8万件以上登載され、その総閲覧数は約2.6億回に達していることがわかりました。また、画像生成AIプラットフォームでは、芸能人の肖像を利用したモデルの投稿が見られ、AI時代に特有の新たな課題も浮き彫りになっています。一方で、従来から問題視されている広告やアダルト領域においてもAIを利用した侵害事例が多数発生していることが確認されました。
アンケート・ヒアリング調査の結果
芸能関連の事務所に対する調査も行われ、33社がアンケートに回答し、9社がヒアリング調査を受けました。調査の結果、リソースが不足している中で、実態を完全に把握している事務所は約7%に過ぎず、大多数は適切な対処法を模索中であることがわかりました。
さらに、約42%の事務所が生成AIなどの新技術をビジネスに前向きに活用しようとする姿勢を持っていることも確認されました。
調査の意味と今後の展望
この調査は、生成AIなど新技術の導入によって従来のアナログな侵害事案から、SNSを通じてデジタルの新たな形態に移行している現状を明らかにします。経済産業省では、不正競争防止法における肖像や声に関する利用の解釈についての議論が進められており、業界全体の動向にも影響を与えることが期待されます。
調査機構では、今後も継続的な調査を行い、明らかになった問題点に対処するためのガイドブックの作成やプラットフォーム事業者との連携、業界ガイドラインの策定に向けた取り組みを進める予定です。また、関連制度やその運用の改善についても検討を行い、業界の健全で持続可能な発展に向けた基盤を築きます。
この調査結果は、今後のパブリシティ権に関する法的な枠組みの整備に向けた重要な資料となるでしょう。業界関係者は、この動きを注視し、積極的に前向きな対策を講じていくことが求められます。