現代サーカスが描く新しい「蜘蛛の糸」
2025年12月5日から7日まで、KAAT神奈川芸術劇場において、現代サーカス『DADDA 2025横浜版』が上演される。この作品は、著名な文豪芥川龍之介の短編小説「蜘蛛の糸」から着想を得たもので、観客に深い問いを投げかけながら、「善」と「悪」の境界について考察する。日本の現代サーカスのパイオニアである瀬戸内サーカスファクトリーが手がける本作は、フランスの現代サーカス会社Cie Basingaとの共同制作となり、国境を越えた独自の身体表現が期待されている。
サーカスが語る人間の業と救済
『DADDA』では、人間の業や裁き、闇と光の対比が表現される。言葉に頼らず、身体を通じて描かれるこの作品は、人が裁かれる理由や、いわゆる「善人」と「悪人」の定義について、観客一人一人に考えさせる。不安定な心情や複雑な人間関係を詩的に表現し、静かに揺さぶるのだ。
現代サーカスという新たなアートフォームは、単なるエンターテインメントにとどまらず、重力や無重力、生と死、光と影を駆使して、深いテーマを追求する。身体全体で語る『DADDA』の試みは、サーカスの新たな可能性を切り拓くものであり、必見の舞台となるだろう。
芥川の「蜘蛛の糸」が織り成す非日常の空間
本作では、天と地(地獄)をつなぐ一本の「蜘蛛の糸」がキーとなる。演出は、瀬戸内サーカスファクトリーの代表である田中未知子氏が手がけ、言葉を排除した演出方法によって深層心理へと迫る。この表現方法は、人間の本質を直視させる重要な要素となっている。
公演の具体的な情報
『DADDA 2025横浜版』の公演は、全3回の予定で、最終日にはアフタートークも設けられる。託児サービスもあり、来場者には多くの配慮がされている。チケットは前売4,000円、当日4,500円で、自由席制となっている。チケット発売は、KAme先行が9月21日から、一般販売は9月22日から開始される。
公演の詳細や予約情報は、KAAT神奈川芸術劇場の公式ホームページで確認可能。サーカスという形式を通じて、人間の深層に触れるユニークな体験を、この冬にぜひ味わってみてほしい。
作品の制作チームと出演者たち
この作品のクリエイティブチームには、世界的に有名なクリエイターが揃い、音楽は鼓童の住吉佑太氏が手がける。衣装デザインは浜井弘治氏、照明デザインは上田剛氏が担当。出演者は、吉田亜希氏、山本瑛氏、長すみ絵氏など、日本を代表する現代サーカスアーティストたちが名を連ねている。
瀬戸内サーカスファクトリーについて
瀬戸内サーカスファクトリー(SCF)は、地域に根ざした創造的な活動を通じて、現代サーカスの新たな地平を切り拓いている団体である。設立以来、地域固有の空間を舞台にしたサイトスペシフィック作品を次々と発表し、観客を魅了してきた。特に「SETO LA PISTE」などの国際現代サーカスフェスティバルを通じて、全国にその名を広めている。今後の活動からも目が離せない。
この冬、KAAT神奈川芸術劇場で展開される『DADDA 2025横浜版』は、現代サーカスが持つ可能性を存分に感じられる貴重な機会である。ぜひ足を運んで、その独創的な舞台を体感してみてはいかがだろうか。