窪田望監督の新作ドキュメンタリー、Berlin Indie Film Festivalで受賞
ドキュメンタリー作品『AIが消し去る声』が、2023年のBerlin Indie Film Festivalで最優秀監督賞を獲得しました。この映画は、AI社会における「分類の暴力性」をリアルに描写しており、特に生まれつき5本指ではない裂手症の当事者やその家族、医療従事者へのインタビューを基にしています。
監督を務めるのはアーティストの窪田望氏。本作は、ただの映像作品ではなく、社会に埋もれがちなマイノリティの声を掘り起こし、観客に深く考えさせる要素が盛り込まれています。
Berlin Indie Film Festivalとは
Berlin Indie Film Festivalは、世界中から集まったインディペンデント映画を上映する国際的な映画祭です。受賞作品はベルリン各所の映画館で上映され、多様な賞が授与されます。映画技術や独自性、ストーリーテリングの質が評価され、新進クリエイターのための貴重な発表の場となっています。
ドキュメンタリー『AIが消し去る声』の内容
本作は、AI開発の現場において見過ごされがちな「外れ値」、つまり社会的マイノリティの存在について深く掘り下げます。5本指にならない身体を持つ当事者たちの話を聞くことにより、AIが無意識のうちに排除している現実を浮き彫りにしています。具体的には、次のような問いを投げかけています。「AIの進化の陰に、無自覚に進むマイノリティの排斥は存在しませんか?」
実際の映像には、裂手症の方々、医療従事者のコメントが含まれ、リアルな声がそのまま表現されています。
出演者には以下の方々がいます:
- - 浅原ゆき (NPO法人Hand&Foot代表)
- - 大塚悠 (NPO法人Hand&Foot)
- - 川端秀彦 (南大阪小児リハビリテーション病院 院長)
- - すらいむ (インフルエンサー、起業家)
受賞歴
『AIが消し去る声』は、これまでにアメリカのHollywood Stage Script Film Competition、ニューヨークのICP Entertainment Film Festival、タイ・日本のCENRETA ART AWARD、インドのDelhi Shorts International Film Festivalなど、合計5つの賞を受賞しています。その中でも最も注目されるのが、Berlin Indie Film Festivalでの受賞です。
日本国内での上映とトークイベント
受賞を機に、日本国内でも積極的な活動を展開中です。東京ドキュメンタリー映画祭では特別上映が行われ、「AIと倫理」をテーマにしたトークイベントも開催されました。このイベントは、AIが引き起こす倫理的な問題に対する具体的なディスカッションの場として機能し、観客の意見を交わしながら問いが深められました。窪田監督が壇上に立ち、「AIに何を教え、何を教えないべきか」などについて考えを共有し、非常に刺激的な時間となりました。
裂手症についての意義
特別上映では、出演者のすらいむさんや浅原ゆきさんも登壇し、ドキュメンタリーの中で触れられた「いなかったことにされてしまう恐ろしさ」について多くの気づきを提供してくれました。この社会では、特定の存在が無視されることが問題であり、それにどのように対処すべきかを問う機会となりました。
現代美術家としての窪田望
窪田望氏は、AI社会の進展に伴う倫理的、社会的問題について深い考察を行い、特に「外れ値の咆哮」というコンセプトを持って表現活動を行っています。これにより、進化のプロセスで排除されることのない社会を目指しています。
窪田監督の活動は今後とも、AIとその影響についての重要な対話を促進していくことでしょう。彼の作品は、私たちの考えを刺激し、より良い社会を実現するための貴重な鍵と言えます。