熟練技術を未来に継承する時計修理の重要性と取り組み
AIやデジタル技術の進化で、さまざまな仕事が効率化される時代に突入しています。しかし、一方で日本のものづくり産業は、熟練技能者の高齢化やその後継者不足の課題に直面しています。特に時計修理の分野では、次世代に技術をどう受け継いでいくかが大きな問題となっているのです。
経済産業省の「2026年版ものづくり白書」でも、熟練技能の継承や人材育成の重要性が強調されています。この中で注目されるのが、ヴィンテージ時計の修理です。時計修理を手掛ける株式会社ファイアーキッズでは、修理体制を強化するための人材採用活動を行っています。最新の調査によれば、「東京都在住で時計修理技能士3級以上」という条件に該当する人材は約75人しかいないという結果が出ています。
年々減少する時計修理技能士の数は、採用の難しさを意味するだけではありません。それは「未来に受け継げる時計」が減少する危機も示唆しています。ファイアーキッズの時計技師、小倉さんは、「修理しているのは時計ではなく、お客様の時間だ」と語ります。
時計は時の流れを受け継ぐもの
実際に、ヴィンテージ時計は何十年もの時を経てもその存在価値を保っています。しかし、その寿命は時計の機能には依存せず、修理やメンテナンスを行える人の存在にかかっています。製造が終了した部品や、図面がないムーブメント、一本ごとに異なる経年変化など、これらにはマニュアルだけでは対応できない多くの課題が存在します。
時計技師の経験と判断が必要な場面が多く、そのスキルが蓄積されなければ、時代の流れと共に価値ある時計は消えてしまう可能性があります。
小倉さんがファイアーキッズで長年にわたり培った技術と経験のもと、多くのお客様の人生に寄り添いながら、その思い出や時間を未来へ繋ぐ努力をしています。
経験が生む信頼
小倉さんは、以前勤務していた時計修理会社で、特に心に残る修理の一つがありました。お客様が持ち込んだヴィンテージ時計は、愛する父から譲り受けたものでした。すでに他の修理店では「修理は難しい」と言われていたこの時計を、無事に修理し、お客様に返したときの感動は格別だったといいます。
「父が帰ってきたような気持ちです」と涙ながらに語ったお客様の言葉で、小倉さんは修理業務の本質に気づきました。それは、単に時計を修理する行為ではなく、そこに込められた家族の記憶や時間を未来に繋げることだったのです。
AIにはできない判断
近年、時計修理の分野でも機器や診断技術が大きく進化しています。しかし、ヴィンテージ時計の修理においては、人の判断が求められる場面が数多くあります。「どの部品を交換するか」「この傷は歴史として残すべきか」といった判断は、時計だけを見ていても正解は出せません。お客様のストーリーを理解することが前提となるのです。
そのため、ファイアーキッズでは修理業務を通じて、お客様との信頼関係や思いを大切にしています。AIにはできない、心を込めた技術の継承が求められています。
未来へとつながる価値
ファイアーキッズは、創業以来「価値あるものを未来へつなぐ」という理念を掲げてきました。しかし、この価値は時計そのものだけではありません。時計を通じて築かれた家族の記憶や思い出、大切な人との時間も、未来への価値として受け継がれるべきです。
私たちの目標は、単なる時計の販売にとどまらず、お客様の大切な時計を次世代に受け継ぐことです。時計が存在しても、それを修理できる人がいなければ、未来へはつながりません。だからこそ、私たちはその技術とお客様に寄り添う姿勢を未来に残し続けていきたいと考えています。
まとめ
小倉さんは最後にこう言います。「時計は時間を見るための道具ではなく、持ち主の人生や思い出が詰まっています。私は一つ一つの時計に対して真摯に向き合い、お客様の思いを未来へつないでいきたいと心から思っています。」
会社情報
株式会社ファイアーキッズは1995年に創業されたヴィンテージ・アンティーク時計専門店で、横浜、中野、銀座に店舗を構えています。国産時計から海外ブランドまで幅広く取り扱い、時計の販売、買取、修理・メンテナンスに取り組んでいます。また、「価値あるものを未来へつなぐ」という理念のもと、時計文化の発信にも力を入れています。
ファイアーキッズの公式サイトでは、詳細な情報が確認できます。