医療的ケア児とそのご家族のための特別上映会
2024年1月、NPO法人AYAが主催し、病気や障がいを抱える子どもたちとその家族を対象にした映画上映会「AYAインクルーシブ映画上映会 2024冬」が開催され、全国10都市で合計1,691人が参加しました。 昨年から続くこの取り組みは、映画を楽しむ機会が限られている医療的ケア児に特別な環境を提供することを目的としています。
映画上映会の背景
医療的ケア児とは、人工呼吸器による呼吸管理や喀痰吸引など、日常生活に医療的ケアが必要な子どもたちのことを指します。厚生労働省によれば、日本国内には約2万人の医療的ケア児がいるとされています。また障がい児は約60万人に上ります。これらの子どもたちが安心して社会生活を送るためには、周囲の理解と支援が求められています。
NPO法人AYAは「スポーツ・芸術・文化を通じて、子どもたちの世界観が広がる場を」とのMissionを掲げ、日常生活や社会活動に困難を抱える子どもたちやその家族に向けて多様な挑戦の場を提供しています。この上映会は、「映画館で映画を観たい」との母親の声をきっかけに企画されました。
映画を観ることのハードル
医療的ケアが必要な子どもたちは、映画館で静かに過ごすことが難しいことがあり、周囲に迷惑をかけるのではないかという心配から映画鑑賞に高いハードルを感じています。そのため、家族で映画館に行くことは非常に難しい状況です。
このプロジェクトでは、空間の貸し切りにより、声を出しても大丈夫な環境を作ることに成功しました。また、医療従事者が参加することで、急なトラブルにも対応できる体制を整えました。参加者は、他の医療的ケア家族との一体感を感じながら、安心して映画を楽しむことができました。
上映会の実績
上映会は1月から3月まで全国の指定された映画館で実施されました。各地での協力により、以下の10ヶ所で計10回の上映を実施しました。
- - TOHOシネマズ 橿原(奈良県)
- - TOHOシネマズ 熊本サクラマチ(熊本県)
- - TOHOシネマズ 府中(東京都)
- - TOHOシネマズ 長崎(長崎県)
- - TOHOシネマズ 錦糸町(東京都)
- - イオンシネマ高松東(香川県)
- - TOHOシネマズ ららぽーと横浜(神奈川県)
- - MOVIX日吉津(鳥取県)
- - ソラリス(山形県)
- - 福井コロナシネマワールド(福井県)
これらの上映会は、ウォルト・ディズニー・ジャパンの協力のもと実施され、全関係者に感謝の意が表明されています。
参加者の声
上映会に参加した家族からは、「周囲を気にせず映画を楽しむことができ、安心感を得られた」「初めて家族全員で映画を観に来られて感激した」という感想が寄せられました。一部の参加者は、これまで映画館に行くことすら諦めていたと語り、今回の経験がとても嬉しかったと述べています。
また、特に気付いた点として、子どもたちが自由に楽しむことができる環境の素晴らしさが挙げられました。音や声、動きに対する理解があることで、普段の生活空間とは違った、リラックスできる時間を過ごせたようです。
今後の展望
NPO法人AYAの代表、中川悠樹氏は「今回の上映会を通して、より多くの子どもたちに映画館での体験を提供することができた。47都道府県を回ることも目指している」と述べました。これからも支援が必要な医療的ケア児世帯を対象にしたイベントを企画し、参加者の声を糧に更なる活動を続けていく所存です。
この取り組みが、今後ますます多くの家族に素晴らしい映画体験を届けることを願っています。