中村鶴松が語る『野田版 鼠小僧』20周年の思い出
2023年4月4日、歌舞伎俳優・中村鶴松が主演する「シネマ歌舞伎20周年記念『野田版 鼠小僧』舞台挨拶付き上映会」が全国34館で特別上映されました。この上映会は、2005年にリリースされた本作がシネマ歌舞伎の第一弾であることを祝うもので、多くのファンに愛され続けている作品として注目されています。
『野田版 鼠小僧』と中村鶴松の関わり
「野田版 鼠小僧」は、演出家の野田秀樹と十八世中村勘三郎が共演し、歌舞伎座で大成功を収めた舞台として知られています。中村鶴松は、当時子役として重要な役どころ「孫さん太」を演じ、これがきっかけで中村屋の部屋子となることが決まりました。彼の歌舞伎俳優としての人生における重要なターニングポイントとなった作品を振り返りながら、鶴松は観客の前でその思い出を語りました。
舞台挨拶には、鶴松が「今月30歳を迎えたばかりの“おじさん太”でございます」と挨拶し、会場には和やかな笑いが広がりました。彼は、勘三郎との思い出について、「カーテンコールで毎回、僕を抱きかかえて舞台の中心に立たせてくれたこと」と振り返り、その当時の光景を鮮明に思い起こしました。
鶴松が語る勘三郎との交流
鶴松は、勘三郎による細やかな配慮や優しさを感じた場面について語る中で、彼からの励ましの言葉にも触れました。特に、「芝居が良ければそれでいい」と言われたエピソードには、彼が当時どれほど勘三郎に感銘を受けていたのかが伺えます。彼の回想からは、二人の深い絆と尊敬の念が伝わってきます。
さらに、鶴松は兄である勘九郎・七之助に日常的に言われていたことについても言及しました。「お前は鼠小僧の時が一番良かった」と笑顔で持ちネタのように語り、兄弟の微笑ましい関係を覗かせました。
シネマ歌舞伎20周年を迎えて
シネマ歌舞伎の20周年を祝う中、鶴松は今後の展望にも触れました。「古典の演目には細かな決まりが多く、客席からは見えにくい部分があるが、寄りで撮影することでその魅力が伝わるのでは」と提案し、古典作品に対する熱い想いを表明しました。彼の意見は、伝統を大切にしつつ、現代の観客にどう伝えるかを考える上での貴重な視点となりました。
最後に、鶴松は「私にとって人生のターニングポイントだったこの舞台を見てくださり、心から感謝申し上げます。皆さんの応援が私のモチベーションです。これからも中村屋をよろしくお願いいたします」と嬉しいメッセージを送り、会場の拍手で締めくくられました。
このようにして「シネマ歌舞伎20周年記念『野田版 鼠小僧』舞台挨拶付き上映会は、満員の観客に囲まれ、中村鶴松の熱い思いが詰まった素晴らしい作品を再び楽しむ機会となりました。