ウールがもたらす夏場の汗冷え対策
夏の暑さがピークに達する中、多くの人が経験する「汗冷え」。特に冷房の効いた室内に戻ったとたんに感じる不快感は、快適な生活を送る上で大きな悩みです。日本毛織株式会社(通称:ニッケ)が金城学院大学・平林研究室と共同で行った研究によって、ウール素材がこの「汗冷え」を緩和することが示されたのです。具体的な研究内容と結果についてご紹介します。
「汗冷え」とは?
「汗冷え」は、暑い屋外から冷房の効いた部屋に移動した際に、濡れた衣服が冷たく感じる現象です。主な要因は、濡れた衣服が熱を伝えやすく、また乾く際に熱を奪うことによるものです。この現象は特に女性からの不満として数多く寄せられています。これまで、汗冷えの影響や対策に関する体系的な研究はほとんど行われていなかったため、ニッケは新たなアプローチでこの問題に取り組むことを決定しました。
研究方法
ニッケは金城大学との共同研究を通じて、モデル実験と実際の着用実験を行いました。モデル実験では、人台を使用してウール、ポリエステル、綿の各素材の性能を比較しました。実験環境を設定し、湿潤状態からの衣服内気候の変化を測定しました。一方で、着用実験では、女子大学生を被験者にデータを集めました。ここでもウールと他の素材の比較が行われました。
実験結果
モデル実験の結果、ウールは湿潤後における衣服の表面温度や衣服内の温度が最も高く、回復の速さも他素材に比べて優れていることが判明しました。これは冷房環境下でも皮膚温が安定し、汗冷えを感じにくいことを示しています。さらに、衣服内の湿度においても、ウールはすぐに低下し、蒸れ感が改善されることがわかりました。
着用実験では、運動中から運動後にかけてウールだけが温度上昇に転じ、湿度の上昇も少なく、快適感が持続しました。このことは、ウールが他の素材よりも冷たさを感じにくいことを裏付ける結果です。
さらなる課題
ニッケは、これらの研究結果をもとに、ウールの機能を最大限に引き出す製品の開発を目指しています。冬場の「汗冷え」についても検証を続ける予定であり、今後の展開に期待が高まります。ニッケは革新的なアプローチを通じて、快適な衣服の提供を目指しています。
会社概要
日本毛織株式会社は、大阪市中央区に本社を置く企業で、ウールに関する多様な研究開発を行っています。今後も生活の質を向上させる製品の開発に力を入れていくことに期待が寄せられています。