三菱ふそうと日本ゴアが共同開発した世界初のEV防護服
近年、電動車(EV)の普及が急速に進んでおり、国際エネルギー機関の発表によれば、世界の新車販売の20%を占めるほどになっています。EVの整備や試験、製造現場では一般的なガソリン車とは異なり、高電圧バッテリーが扱われます。そこで、三菱ふそうトラック・バス株式会社(MFTBC)、日本ゴア合同会社、そしてミドリ安全株式会社が連携し、EV整備向けの新しい防護作業服「ARCTECT GEAR for EV」を開発しました。この製品はアーク熱(Arc Flash)から作業者を守るためのもので、世界初の試みとして注目されています。
EV整備の危険性と必要性
EVの高電圧バッテリーは400Vから800Vに及び、この環境下での最も大きなリスクが「アーク放電」です。この現象は、工具の衝撃や配線ミスによって電気回路がショートしたときに発生し、瞬時に5000℃〜20000℃の高温を生成します。爆風と強い閃光とともに発生するため、一般的な作業服では対応しきれない危険性があります。
このため、EV整備現場では特別な防護服が必要です。これまでのアーク放電対応の防護服は主に電力業界での利用を前提にしており、自動車整備の特有のニーズに応じるものではありません。しかし、EV整備に必要な装備としては、狭い場所での可動性、閉所作業における体温調節や吸汗速乾機能、高電圧と低電圧の切り替えが頻繁に行われることへの対応、さらに長期間使用しても劣化しない安全性能が求められます。
三者の強みの結集
新開発の「ARCTECT GEAR for EV」は、三菱ふそう、日本ゴア、ミドリ安全のそれぞれの技術力を活かして開発されました。
- - 三菱ふそうは、2017年からの「eCanter」を通じたEV整備現場での実績や知識を持っています。
- - 日本ゴアは、業界で知られる「PYRAD® プロダクト by GORE-TEX LABS」を用いて革新的な素材技術を提供しています。
- - ミドリ安全は、70年以上の作業着開発の経験をもとに、動きやすさを追求した設計を行なっています。
「PYRAD® プロダクト」は従来の防護服の常識を打ち破り、軽量かつ強靭な素材を実現しました。難燃性能が素材自体に組み込まれているため、製品寿命中も劣化することなく、アーク放電の熱から作業者をしっかり守ります。また、この高い防護性能はIEC/EN 61482‐2などの国際規格認証も受けています。
今後の販売計画
三菱ふそうは2026年から海外サービス拠点のメカニック向けに順次この防護作業服を導入していく予定です。また、国内の拠点での利用も検討中です。さらに、ミドリ安全ではこの防護性能を持つより汎用的な作業服を2026年夏に販売する計画も立てています。
新開発の「ARCTECT GEAR for EV」は、EVの整備・試験・製造といった多様な業務に対応し、作業者の安全をしっかりと守る存在となるでしょう。開発段階の製品を実際の現場で見ることができる日を心待ちにしています。
コンクルージョン
EVの普及が進む中で、作業者の安全を確保するためには、このような高機能な防護服の導入が不可欠です。三菱ふそうと日本ゴア、ミドリ安全の共同開発による「ARCTECT GEAR for EV」は、未来の自動車整備業界に革命をもたらす一歩となるでしょう。今後の展開に期待が高まります。