映画『ドールハウス』のBlu-rayとDVDの発売を記念して、東京・池袋の新文芸坐で特別な上映イベントが行われた。この企画は、矢口史靖監督の代表作を振り返る特集で、彼のユニークな作品群を一堂に楽しめる貴重な機会だ。
◆ 特集企画「矢口史靖の呼吸」
11月19日にリリースされた『ドールハウス』の発売を祝し、11月17日から26日まで行われた特集企画では、矢口監督の初期の傑作『ひみつの花園』や『アドレナリンドライブ』、社会現象を起こした『スウィングガールズ』、さらには原作小説の映画化に挑んだ『WOOD JOB!~神去なあなあ日常』を厳選した5作品が上映された。
特に注目を浴びたのは、11月23日に開催されたトークショーで、遠藤学プロデューサーが聞き手を務め、矢口監督がその創作秘話を明かした。会場は矢口映画のファンで賑わい、彼の独特の視点と作品の魅力に多くの視線が集まった。
◆ 矢口監督の驚きのアイデア
トークショーでは、矢口監督の「カタギリ」という架空の名前でプロットを出した背景が語られた。オープニング挨拶の中で彼は、「今日は楽しい話…いや、怖い話をしに来ました」と、観客を引き込む言葉で始めた。監督自身が脚本を匿名で出した理由は、事前の作品イメージとのギャップを避けたかったとのことで、この工夫が思わぬ結果を生んだと語った。
◆ 目的は恐怖の掘り下げ
矢口監督は、ホラー映画における恐怖の造形についても説明した。彼は「ハリウッドと日本の恐怖は根本的に異なる。日本の恐怖は、壊せない存在によって生じる圧にある」と述べ、作品作りの哲学を展開した。現実的な恐怖を描くという試みは、彼自身過去の青春映画とは一線を画す大胆な挑戦であった。
◆ 注目のキャスティング
主演に長澤まさみを起用した理由を尋ねられた際、矢口監督は「彼女の表現力に期待してのキャスティングだった」と答え、独自の観点からのアプローチが感じられた。長澤の演技は、これまでの作品とは異なる新しい表情を引き出しており、そこに恐怖と緊張感を見事に融合させた。
◆ アヤ人形の造形
もう一つの主演とも言えるアヤ人形について、監督はそのデザインと造形へのこだわりを説明した。人形は動かさずに恐怖を演出する日本的手法を際立たせつつ、映像において重要な役割を果たしている。この人形がどれほどの恐怖を生むかは、観客の想像力に依存するため、その緊迫感は計り知れない。
◆ 海外映画祭での反響
第45回ポルト国際映画祭での受賞後、矢口監督は「海外の観客は、意外なリアクションを示した」と語り、観客の感情表現の多様性について感想を述べた。驚きや怖れ、そして笑いが入り混じった反応は、観客が映画の持つ多層的な体験を楽しんでいる証拠だった。
◆ Blu-ray&DVDならではの魅力
最後に、Blu-rayやDVDの特典内容も紹介された。特に、江戸時代から続く“生き人形”文化の紹介や、映像特典としてのメイキング映像がファンにとっての見どころとなっている。特に、恐怖の源を探る企画や、監督自身の思いが込められた映像は必見だ。
トークショーの後には、Blu-rayとDVD購入者対象のサイン会も実施され、監督とファンとの温かい交流が繰り広げられた。このイベントを通じて、映画『ドールハウス』の世界がさらに広がる姿を感じることができた。