VR短編アニメーション『猫が見えたら』の挑戦
VRアニメーション映画『猫が見えたら』(英題:IF YOU SEE A CAT)が、2025年の第82回ヴェネツィア国際映画祭のVR部門コンペティション「VENICE IMMERSIVE」にノミネートされたことが発表されました。この作品は、講談社VRラボが制作したもので、アニメーション作家・和田淳とVR映像プロデューサー・石丸健二が共同で手がけました。
作品のテーマと背景
この映画は、日本の精神医療の現実を映し出すものです。現在、国内では約20人に1人が精神疾患の診療を受けているとされており、精神医療は歴史的、社会的な課題に直面しています。和田監督は、精神的な疾患を抱える少年の物語を通じて、その問題をリアルに感じてもらえるよう工夫を凝らしました。
物語の構成は、愛猫を失った少年が幻覚として猫を見えるようになり、そのために精神疾患と診断され強制入院します。プレイヤーはVRの中で、幻覚の猫の視点を通じて少年の病院での経験を共にし、彼の精神の葛藤を肌で感じることができます。この作品は、精神医療についての思索を促すものとなっています。
和田淳監督の思い
監督の和田淳は、こうしたテーマにアプローチする際に、「自分も明日同じ立場にならないとも限らない」という思いを持って制作に取り組んでいると語ります。彼は、精神疾患に対する偏見や理解不足を解消するきっかけを提供したいと考えています。
制作の背景と意義
石丸健二プロデューサーは、『猫が見えたら』というタイトルが少年のセリフに由来していることを説明しました。このセリフは、「幻視の猫が見えたら何が悪いのか?」という疑問を運びます。病院や母親から決めつけられる少年の立場に共感を持ち、精神医療の問題を多面的に考えるためのヒントを提供しています。
作品概要とキャスト
このVRアニメーションは、約37分の尺で、企画・制作は講談社VRラボによって実施されました。主なキャストには、少年役の佐藤聴成、母親役の恒松あゆみなど、実力派の声優陣が揃っています。プロデューサーでありVRディレクターの石丸健二やCGディレクターのOmar Espinosa、音響監督の滝野ますみなど、各分野の専門家が参加しています。
ヴェネツィア国際映画祭について
ヴェネツィア国際映画祭は、イタリアで毎年開催される国際的な映画祭で、世界三大映画祭の1つと言われています。「Venice Immersive」部門には、世界中の優れたXRクリエーターの作品が集まり、独自の作品を発表する場として高く評価されています。『猫が見えたら』がこの映画祭に選ばれたことは、これからのVRアニメーションの可能性と重要性を示すものとなるでしょう。
この注目作品は、2025年8月に完成予定です。精神医療について考えるきっかけとなるこの作品に、ぜひご期待ください。