日本映画撮影監督協会が挑む国際舞台への道
2023年9月、日本映画撮影監督協会(JSC)は文化庁と協力し、国際的に通用する映画撮影者を育成するためのプログラムを推進しました。その一環として、韓国での研修ツアーが行われ、次世代の撮影監督育成に向けた重要な知見とネットワークが形成されました。本記事では、韓国での活動報告をお届けします。
研修ツアーのスケジュール
研修は9月16日から19日までの4日間に渡り、韓国の映像制作現場を巡る内容でした。スケジュールのハイライトは以下の通りです。
- - 9月16日: 羽田空港から金浦空港への移動後、機材レンタルショップ「SLR」を訪問。
- - 9月16日: CGK(韓国映画撮影監督協会)とのシンポジウム「Cinematic Quantum Dialogue」を開催。
- - 9月17日: DEXTER STUDIOSやCJ ENM STUDIO CENTERの視察、機材レンタルショップ「Some Film & Digital」の訪問。
- - 9月18日: 「Pro Cam」を訪問し、釜山国際映画祭を視察。
- - 9月19日: 韓国映画アカデミー「KAFA」を訪問し、釜山国際映画祭の最終日を迎えました。
初日のシンポジウムの意義
特に初日は、ソウルのSLR RENT CINE STUDIOで行われた合同シンポジウムが印象的でした。CGKの代表、チュ・ギョンヨプ氏が開会の挨拶を行い、参加者同士での意見交換の重要性を強調しました。続いて、JSCの副理事長である谷川創平氏が「作品の観点では日韓に距離はない」と語り、国を超えた協力の必要性が強調されました。また、映画『殺人の追憶』の撮影監督であるキム・ヒョング氏からはアジアから世界市場への挑戦を呼びかける言葉があり、会場は熱気に包まれました。
シンポジウムでは、韓国の労働環境や撮影監督の権利擁護に関する制度的な取り組みが紹介され、参加者たちからは日本も若手を守るための制度改善が求められるという意見が多く聞かれました。懇親会では国境を越えた交流がさらに深まりました。
映像制作の現場を視察
研修の中では、韓国のトップクラスのスタジオや教育機関を巡り、その進んだ制作環境を実際に体感しました。DEXTER STUDIOSやCJ ENM Studio Centerの訪問では、映像制作においてVFXの重要性や、大掛かりなスタジオ運営が実際に行われていることに新たな刺激を受けました。また、韓国映画アカデミーでは最新設備と教育体制が整っており、韓国の映像制作が急成長しているその理由を実感しました。
特に釜山国際映画祭では、若い観客の熱気やOTT企業の影響を感じ、映画祭が持つ「マーケット機能」の重要性が再確認されました。
今後の展望
今回の研修を通じて確認できたことは、現場環境に関する法律や助成金制度の充実が、制作活動の質を大きく左右するという点でした。韓国は労働時間の規制や国の補助制度を消化し、世界市場に対応した作品を数多く生み出しています。一方、日本は個人の努力が大きく依存しており、制度面での改善が急務であることが改めて浮き彫りになりました。
今回の経験は次世代の撮影監督を国際的に送り出すための大きなステップであり、国際的な映像文化交流の基盤を築く大切な一歩となりました。JSCは今後も海外の映像団体との協働やマスタークラスを通じ、国際舞台で活躍できる映画撮影者の育成を推進していく予定です。活動の最新情報は随時発信されますので、注目していてください。