音楽劇『アカネイロのプレリュード~赤坂の奏~』が2026年3月16日から22日まで赤坂・草月ホールで上演される。この作品では、赤坂の老舗音楽Bar「アカネ」を舞台に、主人公浩太を始めとした4人の登場人物がショーの再建に向けて奮闘するさまが描かれている。
今回はその稽古場を取材し、実際の演出やキャストの取り組みを目の当たりにした。稽古が行われているスタジオには、Bar「アカネ」のセットが施されており、バーカウンターやピアノが設置されて、劇場の雰囲気が漂っている。ややレトロな趣は、作品のテーマと相まって観客を温かく迎え入れるだろう。
稽古の始めに演出を担当する元吉庸泰は、「この空間で俳優が本当に生活するように演じてほしい」と指示した。彼は俳優同士のキャッチボールが重要であり、それによって物語が面白くなることを強調した。登場人物は実に少ないものの、その関係性の深さとダイナミクスが物語の核となる。
キャストたちは、感情や意図を精緻に伝え合いながら演技を進めていく。世間話のように見える会話の中に、互いの思惑や欲望が垣間見え、どちらが主導権を握るかが見どころとなっている。シーソーのように揺れ動く関係性は、多彩なセリフの応酬と演技で強く表現される。特に、台詞の裏にある温度感や意図をすり合わせ、効果的な反応を生み出すことが求められている。
また、音楽劇であるため、演者の所作や表現にも豊かさを求められる。おしぼりを出したり飲み物を作る動作は、場の雰囲気を一変させる力を持っている。例えば、浩太と渉の対話に淳一が飲み物を差し出すタイミングが合わないと、シリアスな空気が一瞬にして変わってしまう。稽古の中で、誰かが新しい試みをすると、それに仲間が応じ、洗練された演技へと進化していく過程が見られた。
中心的なキャストには、浩太を演じる水田航生と小野塚勇人がいる。彼らは物語の全体像を意識しつつ、セリフや役割について積極的にアイデアを提案する姿が印象的だった。淳一を演じる陳内将はその安定感で全体を支え、鈴木康介はあえて受け身に回ることで面白さを引き出していた。渉役の瀧澤翼は大胆なアプローチでその場を乱し、鈴木曉はトリッキーなキャラクターを体現していた。また、元シャンソン歌手・亜紀を演じる珠城りょうと久城あすは、そのカリスマ性で物語に華を添え、スムーズにストーリーを進行させる力を持っている。
音楽の面でも特徴的な要素が加わる。ピアノの音色は、キャラクターたちの気持ちを繊細に表現し、懐かしさすら感じさせる。音楽Barであることを反映した演出のマイクスタンドもあり、観客の心を躍らせる要素となるだろう。
3月という春の訪れを感じる時期、赤坂・草月ホールにおいて1台のピアノと4人の俳優が生み出す新たな“プレリュード”がどのように展開されるのか、稽古に参加した皆の期待が高まるばかりだ。公演に向けた準備が着々と進められ、公式サイトではグッズ販売開始のお知らせなど、最新情報が更新されている。ぜひその魅力を、劇場で直接感じてもらいたい。