小泉八雲とセツ
2025-11-05 19:04:49

新装版『思ひ出の記』が描く小泉八雲とセツの物語

異文化をつなぐ物語『思ひ出の記』の魅力



2024年12月、小泉八雲の妻である小泉セツによる回想記、『思ひ出の記』が新装版として出版されました。これは、ラフカディオ・ハーンの実像を知るための貴重で愛情に満ちた視点を提供する一冊です。本書は、八雲とセツの13年8ヶ月にわたる結婚生活を、セツの視点から詳細に描写しています。

異文化に寄り添った夫婦



セツは、日本と西洋の文化が交差する場で、夫である八雲と共に生活していました。旧仮名遣いを現代表記に改めた新装版は、幅広い世代の読者に親しみやすく再編集されています。この回想記には、彼女が愛する夫の姿が丹念に描かれており、当時の文化的背景や夫妻の深い絆を感じることができます。

本書は、特にNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の制作陣にとって「バイブル」と称されています。制作プロデューサーの橋爪國臣氏は、インタビューで「役者さんに『思ひ出の記』を読んでもらったことで、私たちが目指している空気感を伝える助けになった」と述べています。また、主題歌を担当するハンバートハンバートの佐藤良成氏も、セツの回想記を基に曲作りをしたと語っており、作品の素晴らしさが次世代へと受け継がれています。

セツの思いと八雲の人柄



著者である小泉セツは、1868年に松江藩家臣の家庭に生まれ、松江に英語教師として赴任してきた八雲と運命的な出会いを果たしました。彼女は、八雲の文学活動において重要な役割を果たし、ハーンが日本文学における再話文学の巨匠となる手助けをしました。彼女自身も豊かな表現力を持った文学者であり、本書においては自身の経験や思いを丁寧に描いています。

新装版には、初翻刻となる手記が2編も収録されています。セツの祖父にまつわるエピソードを綴った「オヂイ様のはなし」や、幼少期の思い出を描いた「幼少の頃の思い出」は、本書で初めて全文が公開されます。「オヂイ様のはなし」では、家族への誇りとともに、自身のルーツについても深く考えさせられます。また、「幼少の頃の思い出」では、3歳で「もらい子」であることを知ったときのセツの複雑な感情が伝わってきます。

特に印象的なのは、初めて出会った西洋人・ワレットとのエピソードです。「もしもワレットから小さい虫眼鏡をもらっていなかったら、後年ラフカディオ・ヘルンと夫婦になることも難しかったかもしれぬ」という一節からは、セツと八雲の運命を結びつける運命的なエピソードが伺えます。

書籍の詳細



新装版『思ひ出の記』は、134ページにわたり、各章がセツの人生のさまざまな側面を描いています。小泉八雲記念館の館長である小泉凡氏が解説を寄稿しており、セツの人生のクライマックス期における彼女の思索と感情を深く理解する手助けとなっています。この書籍は、文学を愛するすべての人にとって価値ある一冊となることでしょう。価格は1,760円(税込)で、ISBNは978-4-86456-533-2です。

新たに書かれたストーリーとセツの独自の視点を通じて、小泉八雲の人間性が浮き彫りにされる本作は、ぜひ手に取ってほしい一冊です。


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